ご家族の声が教えてくれたこと
「こんなに心が動いたお葬式は初めてでした」
ひとつの納棺が、家族の会話を変えた
あるご家族は、身内同士の関係が少しぎくしゃくしていた
日頃あまり会話もなく、遠慮が先に立っていたという
その中で迎えた納棺の日
ご遺体を整える時間が進むにつれて
徐々に、ご家族の表情も、空気も、変わっていった
最初は黙って立っていた人が、ポツリと語り出す
子どもが、写真を一枚持ってきて並べる
最後には、手を合わせながらこう言ってくれた
今日、やっと父にありがとうが言えました
葬儀が家族の会話をつなぎ直す
その瞬間を、私は何度も見てきた
感情を出してよかったという声
ある方は、式の後こう話してくれた
笑ってはいけないと思っていたけれど
思い出を話していたら、みんな自然に笑っていて
あれが一番の供養だったと思うんです
別の方はこう言った
怒りを持ったまま送り出すなんていけないと思っていたけど
正直に口に出してよかった
許せないという気持ちを言ってみたら
不思議と、少し楽になりました
悲しみだけでは、心は完結しない
私が感じるのは、
悲しみだけで終わる葬儀は
どこかで心が引っかかったままになるということ
喜びも
怒りも
寂しさも
そのすべてが、故人との関係に含まれている
それを「出していい」と思える空間をつくること
それが、私の仕事だとあらためて感じている
『このお葬式にしてよかった』という言葉
ご家族から何より嬉しいのは、最後にかけていただくこの言葉
このお葬式にしてよかった
こんなに心が動いたのは初めてです
それは、派手な演出でも、立派な会場でもない
ただ、自分たちの言葉と感情が許される時間だったという実感
それが、喜怒哀楽の家族葬®の価値だと私は思っている
喜怒哀楽に正解はない
誰かが泣いて
誰かが笑って
誰かが黙っていたとしても
どれも間違いではない
感情に正解はない
ただ、向き合う場があるかどうかだけが大切
それをご家族の声が、いつも私に教えてくれる
次章へ
次回は、これからの時代に向けて
なぜこの葬儀が必要なのか、そしてどんな未来をつくりたいのか
私のビジョンを言葉にして綴ります
▶ 第十一章 これからの供養と、心の居場所について