弘前市家族葬、事前相談から始まった家族の絆

2024.09.27

この物語は、とーたる・さぽーと0528が実際に担当した葬儀を元にしたノンフィクションです。
実例のエピソードを基に、心温まる家族葬、喜怒哀楽の家族葬の一例として描いております。

「すみません、お伺いしたいことがありまして…」

その日の朝、一本の電話が鳴った。
声の主は、心の準備がまだ整っていない様子の女性だった。
父親が長く病院に入院しており、容体はあまり良くないという。
病状は心不全。
電話の向こうで彼女の声には、悲しみとともに、どこか冷静さを保とうとする努力が感じられた。

「父は、もうすぐ…きっと、残された時間が少ないんです。でも、どう見送るべきか決めかねていて…」

彼女は、元々浄土真宗の信仰を持つ家庭で育ったが、父は形式にこだわる性格ではなかったという。
派手な葬儀を嫌い、むしろ家族と静かに過ごすことを大切にしていた。
彼女はそんな父の想いを尊重したいと話しながら、どうすればいいのかを丁寧に相談してきた。

事前相談のために、彼女と会う約束をした日は、穏やかな曇り空が広がっていた。
彼女がどこか落ち着かない表情で現れたのを見て、私は優しい言葉で彼女を迎え入れた。

「どうぞ、ご安心ください。お父様を静かに、心を込めてお見送りするための最善の方法を一緒に考えていきましょう。」

彼女は少し安堵した表情でうなずき、静かに話を始めた。

「父は、できれば俗名のまま供養してほしいと言っていたんです。形式張った葬儀よりも、家族で静かに見送る形を望んでいて…」

「かしこまりました。
ご家族だけでの静かな葬儀をお考えとのことですね。
それなら、直葬の形式でのご提案ができます。
また、ご希望であれば、浄土真宗のお寺に依頼し、しっかりとお経をあげていただくことも可能です。」

彼女の表情が少しずつ和らぎ、父親の希望に寄り添える形での葬儀が進みそうなことに安心感を覚えている様子が伝わってきた。

次に話し合ったのは、火葬場についてだった。
彼女は、家族の墓がある平川市の斎場を希望していた。

「お父様を平川市斎場で見送る準備を進めましょう。お花やお菓子、果物などの枕飾りもこちらでご用意いたしますね。お父様が安らかに旅立たれるために、心を込めて整えていきます。」

彼女は感謝の言葉を口にしながら、しっかりと頷いた。

「父のために最善を尽くしていただけるのが分かって、少しほっとしました。ありがとうございます。」

彼女は、父との思い出が詰まった家での葬儀を想像しながら、少しずつ心の準備を進めているように見えた。

「食事の手配はどうしたらいいですか？」

彼女は、葬儀後の食事についても気にしていた。
家族だけでの小さな集まりだが、きちんとしたいという気持ちがあるようだった。

「斎場での飲食は、ご自宅での準備がよろしいかと思います。
お父様との最後の時間を、どうか家族の皆様でゆっくりとお過ごしください。」

そう伝えると、彼女は再び穏やかな笑顔を見せた。

相談を終え、彼女はゆっくりと立ち上がり、深く息をついた。

「お父様を見送る準備は整いました。心を込めて、最後の瞬間まで一緒に寄り添わせていただきますね。」

「本当にありがとうございます。お父さんもきっと、これで安心して旅立てると思います。」

その言葉には、安堵と感謝が込められていた。

彼女の胸に残るのは、父とのたくさんの思い出と、心温まる家族の絆だった。
父を見送る準備を経て、彼女は新たな一歩を踏み出すことができたのだ。

父との最後の別れを、家族で静かに、そして温かく迎えることができた。
形式にとらわれず、心からの感謝と敬意を込めた葬儀は、彼女にとって忘れられない時間となった。

家族の絆はこれからも続いていく。父の存在は、これからも彼女の中で静かに生き続けるだろう。

「ありがとう、お父さん。」

その言葉は、これからも彼女の心に深く刻まれ続けていく。

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