弘前市葬儀社としての見解|書類の正しさと、心が崩れる瞬間【喜怒哀楽の家族葬®】


葬儀社としての見解

書類の正しさと、心が崩れる瞬間

私は、青森県弘前市で孤独死葬儀も専門としている葬儀社だから言える。
葬儀社が故人の肉体的確認なんて、ほとんどできない。
まして、書類に記された名前と、実際のご遺体が一致しているかどうか。
それを確かめる権限は、私たちにはない。
検視、警察、医療が確認し、行政が許可を出し、その先で初めて葬儀社が動く。
つまり「書類が正しければ進む」。
しかし、その正しさがずれたとき、心が崩れる。
再び同じ葬儀を行わなければならない遺族の苦しみを、私は声を聞かずとも知っている。

書類が正しければ葬儀は動く

葬儀は書類で成り立つ。死亡診断書、検案書、火葬許可証、搬送記録。
これらが揃えば、手続きはスムーズに流れ、火葬場のスケジュールも確定する。
だが、その正しさを最終的に確認する仕組みは、現場にはない。
葬儀社は行政の書類に従って動くだけだ。つまり、「書類が正しければ正しいことになる」。
これが、葬儀業界の静かな矛盾である。

対面が省略される現場の事情

損傷が激しい遺体は、遺族対面を省略することがある。
それは冷たい判断ではなく、精神的苦痛を避けるための配慮だ。
孤独死や事故死、腐敗が進んだケースでは、「見ることができない」「見せるべきではない」状態がある。
そのとき、確認は写真と書類で済まされる。
葬儀社は「確認済」と記された書面を受け取り、搬送・納棺・葬儀へと進む。
それが制度であり、現実である。
しかし、ここに人の目が介在しない危うさが潜む。

そして、取り違えが起きたとき

取り違えが発覚するのは、たいてい火葬後だ。
青森県内で起きた遺体取り違え事案では、遺体を別の家族へ誤って引き渡し、火葬と納骨まで済んでから判明した。
残された家族にしてみれば、信じられないことだ。
「自分の父だと思っていた人が、他人だった」と知る。力が抜ける。涙も出ない。
そして、再び葬儀をやり直さなければならない。
「あの一回目の葬儀は何だったのか」――そう叫びたくなる。
その声を、聞かずともわかる。私たちは、何度もその場に立ち会ってきたからだ。

お金と責任の流れ

国家賠償が成立すれば、補償は2本立てになる。
ひとつは実費補償。再施行費、火葬費、改葬許可費、僧侶依頼費、位牌作成、人件費、鑑定費など。
もうひとつは精神的損害。心を壊されたことへの慰謝だ。
支払いの多くは示談で決着し、遺族が立替払いを行い、行政が清算する。
葬儀社はその記録を残し、再施行の証明とする。
だが、費用の補償以上に重いのは、信頼の回復だ。
葬儀はやり直せても、「最初の別れ」は戻らない。

職員の失態ではなく、構造の歪み

世間は「誰のミスか」を探す。だが、現場の実感として言えるのは、個人の過失ではなく、構造的なほころびだ。
検視は警察、引渡しは行政、搬送は葬儀社、焼却は火葬場。
この連携が一度でもずれれば、取り違えは起こる。
誰も故意ではない。それでも、葬儀社が最前線で謝罪し、再施行を整える。
私たちは「責任の所在」を追うより、「どう正すか」を先に考える。
葬儀とは過ちを終わらせる儀式でもあるからだ。

再発を防ぐには

  • 識別札の二者確認
  • 搬送記録の共有
  • 収骨時の氏名復唱
  • 遺族立会いの確保
  • 工程ごとの署名保全

これらを徹底するだけで、多くの事故は防げる。
小さな確認が、家族の心を守る。

結び 葬儀社の目線から見た「祈り」

葬儀社は、真実を判断する機関ではない。与えられた情報の中で最善を尽くす。
だから、書類の一枚一枚に、私たちは命を預ける。
だが、書類がどれほど正確でも、「もう一度葬儀をやらなければならなかった遺族」の心までは救えない。
一回目の葬儀で流れた涙は、どこへ行くのか。
その想いを想像できるかどうかが、葬儀社の人間力だと思う。
亡き人を正しく送ることは、遺族の権利であり、葬儀社の誇りであり、社会の責任である。

参考報道・出典

  • TBS NEWS DIG「青森県警が遺体を別人の家族に誤って引き渡し」(2025年11月6日報道)
  • 共同通信・ABEMA TIMES 等 各社報道より事案概要を参照

※本記事は上記報道を参照したうえで、葬祭現場の一般的な事例をもとにした見解です。
※特定の個人・団体・機関を批判、断定、または責任追及する意図は一切ありません。

著作・運営情報

著者:樺澤忠志(感情設計師)
運営:喜怒哀楽の家族葬®/とーたる・さぽーと0528
所在地:青森県弘前市高屋本宮380-2
連絡先:0172-82-2078
更新日:2025年11月7日

免責事項

当サイトに掲載されている内容は、葬儀現場での一般的な事例・経験・制度理解を基にした情報です。
法的助言を目的とするものではなく、個別案件における最終判断は関係機関(行政・警察・医療機関等)の指示に従ってください。
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